ロンドン訪問記2(映画けいおん!の舞台モデル関係)ロンドン・アイ周辺にて
前回の続きです。
ウェストミンスター橋の上から撮ってみた
- 最寄りの地下鉄駅はWaterloo、もしくはWestminster。
劇中には出てこない空中ブランコ
- 左の写真は地上から撮ったもの、右はロンドン・アイのゴンドラから見下ろして撮ったもの。
- HTTが演奏していたジュビリーガーデンズとロイヤル・フェスティバル・ホールの間で見かけた空中ブランコ("Star Flyer"と言うらしい)。
- ただ、劇中では一度も出てこない(上空からの俯瞰カットでは、空中ブランコの建っている場所が駐車場になっている)。
- 映画版BDの特典映像(シナリオ・ハンティング)でも、何ら言及されていない。
- ロンドン・アイのインパクトを弱めたくないので描写を省いたのか?と思ったが、そうでもなさそうだ。
- GoogleやYoutubeで検索してみたところ、2011年より前のコンテンツはヒットしないので比較的新しい遊具施設と思われる*2。
- ひょっとすると、山田尚子監督ほか京アニスタッフが取材した時点では存在しなかったのかも知れない(あるいは夏季限定の施設?)。
騎馬像など
- 劇中ライブに挟まれる形で見える騎馬像は、ウェストミンスター橋西詰に建っている。
- これは、ケルト系先住民の女王ボアディケア(ブーディッカ)の像*3。
- 残念ながら陽光を浴びても、映画のように金色には光らなかった。
- 山中先生の「ヘイ、タクシー!」に出てくるライオン像は、騎馬像の反対側、橋の東詰に建っている。
- 現在は白色の像だが、もともとの色は赤だったらしい*4。
その他
最後に
- 観覧車ロンドン・アイは、ほんとにオススメです。
- ただ、休日や催し物をやっている日は混雑して長い行列待ちになると思うので、事前に国内でネット予約したほうがいいかも。
- Flexi Fast Trackという種類のチケットだと、日時指定だけで好きな時間に行ってほとんど列待ちしなくていいです。値段はやや高いですが*6。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2012/07/18
- メディア: Blu-ray
- 購入: 40人 クリック: 1,420回
- この商品を含むブログ (89件) を見る
*1:晴れた日にも撮ってみたのだけれど、橋の上は観光客や物売りがごった返していてまともな写真にならなかった。
*2:2011年の旅行記事には言及されている:『夏のロンドンを満喫! 2011年』 [ロンドン]のブログ・旅行記 by miyalyさん - フォートラベル
*3:女王の詳細について:古代のヒロイン・ブーディッカ - Yukihisa Fujita Mystery World - Yahoo!ブログ
*4:英語の解説です:http://www.london-sightseeing.co.uk/south_bank_lion.php
*5:今回見て回った時期はHTTの卒業旅行(春分より少し前?)から約半年のインターバルがあるので日没時間はほぼ同じだと思うけど、なかなか上手くいかない。
*6:公式サイトより:http://www.londoneye.com/TicketsAndPrices/Tickets/Flexi_Fast_Track/default.aspx
ロンドン訪問記1(映画けいおん!の舞台モデル関係)
唐突ながら先日、3泊5日にてロンドンを訪れました。
以下、メモ的に(別エントリでまだ続くかも)。
ヒースロー空港
- ロンドン到着後のカットに出てくる電動カート。
- 映画でおばあさんが乗っていたこのカートは、おそらく高齢者・身障者向けサービス。
- カートの背部にある"Heathrow"のロゴ文字は、車椅子が装着されているため見えないことが多い模様。
- ともあれ、HTT5人が機内から出た初っ端のカットにあのロゴを出すことで、海外旅行の新鮮さを感じさせる演出効果はあったと思う。
- 飛行機から降りた後、唯が「ねー、国際人だよ!空飛んじゃったよ!」とはしゃぐムービングウォーク。
- 向かって右側の壁面にロンドン・アイからの夜景がでかでかとディスプレイされているのは映画の描写どおり(鑑賞時には気づかなかったけれど)。
大英博物館
- 博物館内で1階のカフェテリアを見下ろすカットは、3階の展示エリアと食堂に挟まれた短い廊下から撮影できる。
Harpers Cafe
- 旅行2日目、朝の道中に1カットだけ出てくるカフェ(映画では唯がHTTロゴのネオンを指さしている)は、地下鉄London Bridge駅の南西方向。
- 店舗の正式名称は"Harpers Sandwich Bar"かもしれない*1。
- 店舗前の車両進入禁止標識は、映画には出てこない。キャラクターを描く際の邪魔になるから省いたのだろう。
- 地下鉄下車後、3日目に出てくる高架下や、2日目午後のBorough Marketとセットで見て回るのもいい。
- モーニングセットは、トースト・目玉焼き・ベーコン・ソーセージ・マッシュポテト・煮豆。そこそこのボリュームで4ポンド(頼めば目玉焼きをスクランブルエッグに変えてくれるかも)。ドリンクは別注文だった。
『氷菓』21話について。
以下、メモ的に。
- 19,20話と同じく原作4冊目『遠まわりする雛』からの短編。
- 一言でいえば「バレンタイン回」です。
中学時代の摩耶花
千反田さん
- 2人が雑貨屋に立ち寄るくだりはアニメ版の演出。
- 摩耶花に「ところでちーちゃんってさ、好きな人いないの?」と聞かれて慌てる千反田さんの真意はいかに・・・?
- 登校のシークエンス、ここでもバレンタインのことが話題に。
- 千反田家では、親しい人にお中元もお歳暮も贈らないのでバレンタインのチョコも割愛、らしい。
- 原作では笑顔でサラリと言ってのけるところ、アニメではかなり緊張した表情だった(いろいろと想像させますな・・・)。
- 画面の右端には、軽音部員らしきギターケースを担いだ生徒がチラッと映るのだけど、男子でした*1。
- 部室に置いていた摩耶花のチョコが盗まれたのは自分の責任だと、校内を探し回ろうとする千反田さんがホータローに手首をつかまれる場面。
- 涙の粒がキラキラと宙を舞う描写、今までにない美しいシークエンス。
- これまで、千反田さんがホータローの手首をつかむ描写はあったけど、その逆はなかったですね*2。
摩耶花は変わったのか?
- 制服の上に着ているコートは昔と同じのようですが・・・高校生の摩耶花です。
- 里志に渡す予定のチョコがなくなったと聞いて、寂しげに笑ってみせる場面。
- 冒頭の表情と対照的だけれど、昔に比べると性格が丸くなったのか、どうか・・・?
- そういえば、里志も中学時代はホータローにゲームで負けると怒りを隠さなかったそうだし(今は笑って流す)。
里志とホータロー
- 摩耶花のチョコはすでに里志が受け取っていた、そのことを千反田さんや摩耶花に言わなかった里志をホータローが問い詰める。
- 里志に対してここまで強く向かっていくホータローも珍しい。千反田さんの一本気な性格に感化されたのかどうか。
摩耶花と千反田さん
- 上の男子チームと同じく、橋の上での会話。
- 里志がチョコを受け取っていたことを摩耶花も感づいていた・・・という流れ。
- このくだりはアニメ版のオリジナル。原作では以下の描写。
この手の話は、里志が伊原に打ち明けていたのだとしてもやはり、野郎同士のものなのだ。その分、たとえば千反田と伊原も、女同士の話をしているのだろう。そしてその話は俺に漏らされることはなく、里志もまた今日の話がやつの全てではなく、もちろん俺も、里志に全てをさらけ出すわけではない。
米澤穂信『遠回りする雛』文庫版p.342-343より引用
- ホータローの一人称語りで進められる小説版ではフォローできないところを上手く拾っていたと思う。
- このあと、夜になってから里志が摩耶花に電話をかけるくだりもアニメ版の演出。里志を悪者にしたくない制作スタッフの配慮だろうか。
その他
- 今回の「犯人」は里志だったけど、その犯人探しの真相を「男同士の秘密」にしておく流れは「クドリャフカの順番」と似ている。
- 里志からすれば、摩耶花の好意を無にする気は毛頭ないけど、あの大きなチョコを抱えて持って帰るのは気恥ずかしいし、そのことを周囲に説明するのも嫌だ、自分だけの問題として処理したいところを千反田さんに出くわしてしまい、ホータローにも釈明らしきものを要求されるし、予想外の展開だったのだろう。
- 橋の上で「こだわることをやめた」云々を語ったのは、里志ならではの煙に巻く言い回しか、単にとっさの言い訳だったか。
- 古典部シリーズのキャラクターは「何でも隠さず腹を割って話す」タイプの親しさではなく「必要以上に相手の内側に踏み込まない」タイプの親しさを見せている、そういう距離の置き方が米澤作品の特徴だと思う。
- ホータローから見た摩耶花のイメージは般若らしい(確かに執念深そうではある)。
- しかし、般若(能面)の本と、般若心経(仏教)の本を並べてディスプレイするのはいかがなものか・・・図書委員でもある摩耶花の意見を聞いてみたいところ。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 146回
- この商品を含むブログ (144件) を見る
- いよいよ来週で最終回。
『氷菓』20話について。
以下、メモ的に。
- 前話と同じく原作4冊目『遠回りする雛』からの短編。
- 正月に神社を訪れたホータローと千反田さんがふとした手違いで納屋に閉じ込められる話。
- 18、19話、そして今回もホータローと千反田さんが二人きりになるシークエンスの多いエピソード、三部作と言っても良いかな。
千反田さん
- 今回の出で立ちは小紋。振袖は大学までお預けらしい。
- 納屋に閉じ込められた際の表情。
- 困惑、乗り気、恥じらい・・・とバリエーション豊か。
- そういえば19話でも恥ずかしがる顔が出てきたけれど、今回もホータローとの関係性が前提になっているわけで、前話はうまい伏線になっていた印象。
- 18話から、2人で図書館、部室、そして神社・・・知らない人が見たらカップルのようにも見えますし。
つまらないものですが
- 千反田さんが自宅から持ってきたお酒を巫女さん(友達の十文字さん)に手渡す。
- 酒瓶に巻かれたのし紙(?)によれば、千反田さんの父親は「鉄吾」という名前らしい(なんか怖そう)。
ホータロー「つまらないものですが・・・」
千反田さん「ふふっ、折木さん、それは私のセリフです」
摩耶花
- 千反田さん、十文字さんに負けず劣らず摩耶花も表情が豊かだった。
- 左から順に、千反田さん、里志、ホータローに顔を合わせた時の表情。
- 親しみ、はにかみ、憮然・・・ものすごく分かりやすい変化である。
- 摩耶花は割と感情が顔に出るタイプなのかも知れない。
袋のネズミ
- 織田信長がお市の方から「小豆を入れて縛った袋」を受け取って自分が「袋のネズミ」だと悟ったエピソード。
- 原作では、同じ『遠回りする雛』の「正体見たり」でも言及されている。アニメでは7話相当だが割愛されていた模様。
- TV時代劇のエピソードを借用する形でホータローが里志に助けを求めるのは「里志なら分かってくれるはず」との期待感ゆえ。
- そういえば、14話「ワイルドファイア」でもホータローが里志に薄力粉を投げ渡すくだりがあったけれど、2人の信頼関係を裏付けるエピソードとして共通性が見えるかも*2。
- 次回21話でも、ホータローと里志の関係性に焦点が当たるはずなので、そちらも注目したい。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 146回
- この商品を含むブログ (144件) を見る
『氷菓』19話について。
以下、メモ的に。
- 原作4冊目『遠回りする雛』からの短編。
- 今回の登場人物はホータローと千反田さんのみ、ロケーションは部室のみ。
- 放課後に流された校内放送という、たったひとつの情報を手がかりにその背後にある事件を2人が推測してみる趣向。
- 話の流れはさておくとして、今回は千反田さんの表情や挙動が面白かったです。
ふくれっ面、ジト目、ぷうっ!
- 腫れぼったい目、訝しげな顔つきといえば、よく摩耶花がこういう表情をホータローに見せるのだけど、千反田さんは珍しい。
- 右端のカットは「きな臭い」の「きな」がどういう意味か興味を持ったところ、ホータローに軽くあしらわれて「ぷうっ!」とむくれるところ。
- 原作には(絵はもちろんのこと)そういう仕草の記述もないのでアニメ版の演出ですね。
- 前話「連峰は晴れているか」は原作未読だけど、ホータローが夢想するタンデムのくだりとか、恋愛っぽいムードを匂わせるのはアニメの演出かと思う。
恋に落ちる2人?
- ホータローの推理に疑問を感じた千反田さんがぐいっと詰め寄る。
- 自然と口元も急接近。
- 他に誰も居ないのに恥ずかしがる2人。
- 千反田さんがホータローの前で明らかに恥ずかしそうな顔をするのは、文化祭のコスプレ写真以来か。
覗き見るようなカメラアングル
- 部室にあるスチール棚の後ろから。
- この角度から見ると、千反田さんの接近具合はかなり怪しい(通りすがりに壁新聞部あたりが見ていたら次号のネタにしたくなるショットなのでは・・・?)。
- 千反田さんが急接近する一連の描写はアニメ版の演出。原作にはない恋愛要素を加味しているようだけど、劇中で(どっちがどっちに惚れている的な)直接的言及はないのでギリギリ「ほのめかし」のレベルに留まっていると思う。
- 20話「あきましておめでとう」でもホータローと千反田さんが二人きりになる場面がある(というかクローズアップされる)はずだし、果たしてどう見せていくのやら。
その他
- 登場人物・ロケーションともに最小限に抑えた地味なエピソードだけど、犯罪事件を織り込んでいるところは古典部シリーズにしては珍しい趣向。
- 同じく米澤穂信作品、主人公たちが犯罪事件により深くかかわっていく「小市民シリーズ」との違いを比較してみるのも面白いかも知れない。
- 限られた情報から推理を試みる趣向で言えば『春期限定いちごタルト事件』中の「おいしいココアの作り方」と似ているかな。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 146回
- この商品を含むブログ (144件) を見る
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/12/18
- メディア: 文庫
- 購入: 16人 クリック: 414回
- この商品を含むブログ (662件) を見る
『氷菓』17話について。
以下、メモ的に。
- 原作3冊目『クドリャフカの順番』編の最終話。
- 前回で盗難事件(十文字事件)にスポットが当たったものの、その犯人探しは添え物程度の扱いで、見どころはキャラクターそれぞれの行動とその背景。
- 今回17話のキーワードとなるのは「期待」です。
河内さんと「期待」
田名部さんが「期待」していたもの
- ホータローは盗難事件の犯人を田名部さん(総務委員長)だと今回あっさりと見破るわけですが、その経緯は割愛。
- 田名部さんと陸山さん(生徒会長)と安城さんは「夕べには骸に」の共同制作者。
- 作画担当の陸山さんと比べると、田名部さんは自分の実力が遠く及ばないこともあって、昨年に続いて漫画制作で陸山さんに期待をかけていた。
- 田名部さんにとって「友達に期待すること」の前提として「自分の限界を悟って諦念すること」がある模様。
- しかし、陸山さんからは漫画を書くモチベーションが既に失われていたわけで、そこを何とか振り向かせようとして画策したのが十文字事件であった。
- 文化祭の閉会式では、陸山さんが田名部さんのほうを振り返って「おつかれ」と声をかけるが、田名部さんの真意には気づかずじまいだったか。
- ともあれ、多才で女子にモテそうな雰囲気の陸山さんと比較的地味な風貌の田名部さん。いわば「天才肌と努力家」の違いがキャラクターデザインにも現れていて面白かった。
里志にとっての「期待」とは?
- 前回16話で「期待してるよ、ホータロー」とつぶやいたくだりから分かるように、犯人を二度も取り逃がした経緯から否が応でもホータローのスキルに期待をかけざるを得ないのが里志の立場。
- これは、友達との実力差を痛感した田名部さんの立場と相通づるところ(両者の共通点を見せるために、アニメ版では里志がホータローと田名部さんの会話を聞いていた脚本にしたのだろう)。
- 田名部さんサイドとは違い、期待をかけられたホータローのほうから里志に共闘のオファーがあった模様。
- 自分の限界を悟ってホータローのサポート役に回ることは、実際のところ里志にとってあまり気分のいいものではなかったようで。
- とはいえ、終盤のくだりを見ているとさほど根に持っている風でもなく、里志は気持ちの切り替えが早いほうだと思う。
入須先輩の考える「期待」とは?
- 入須先輩が千反田さんに対して使っていた「期待」は、先述と異なったニュアンス。
- 14話でも使われていたキーワード「期待」は下記のとおり。千反田さんに「頼みごとの秘訣」を伝授するくだり。
「お前がいますぐにでも使えそうな、初歩的なのは『期待』だろう。いいか。相手に『自分に頼る他にこいつには方法がない』と思わせることだ。自分が唯一無二の期待をかけられている、と感じた人間は、実に簡単に尽くしてくれる。(中略)相手に期待するんだ。ふりだけでいい」
(米澤穂信『クドリャフカの順番』文庫本149ページより引用)
- 相手に期待している「ふり」をするパフォーマンス・・・これはたぶん千反田さんが苦手とする分野で、今回の校内放送でも「自分の意図しない部分=地」が出てしまったのを入須先輩はしっかり見ていたのだろう。
- 入須先輩が考えていたのは、相手を動かすために自分の感情とは異なる言動をすること。例えば、本当はそんなに怒っていなくても「何やってんだ、早くしろ!」と語気を強めて言うと相手を急かせる効果があるとか。実際にそういう心理操作に長けた人もいるけど、誰もが簡単にできる戦術というわけでもないし。
- 入須先輩から見れば、千反田さんの挙動は「甘えている」ように見えるとのこと。
- これはノンバーバルコミュニケーションというか、ホータローをはじめとして相手にグッと寄っていく癖など、自分の(言葉ではない)立ち振舞やジェスチャーの部分を相手がどのようなニュアンスで受け取っているかについて、千反田さんは割と無頓着なんですね。
- こと相手が男子だと「俺に惚れてるんやろか・・・いやいやそういう作戦やろか?」などと勘ぐってしまう可能性も大だし、入須先輩は(異性に依頼しろと先に提案したものの)相手の反応を読み切れない千反田さんが「素の部分」と「戦略的パフォーマンス」の区別がつかないまま突っ走ることを危うく感じた模様。
供恵も「期待」していた?
- 17話には登場しなかったけれど、物語進行においてキーとなる「夕べには骸に」を差し出すなど、ホータローの姉・供恵は重要なポジションだった。
- もしかすると供恵は「十文字事件」の黒幕で、田名部さんほか昨年の漫画制作チームをそそのかしていた・・・という可能性もあるけど「わらしべプロトコル」が示唆する偶然性の面白さがこの作品のポイントだと思うので、すべての意図を供恵に結びつけるのはやや不自然かな。
- ただ、里志や田名部さん的な文脈の「期待」とは少し違うけれど、自分が高校時代にやりたかったけどやれなかったことをホータローたちの世代に託してみる意図、5人目の古典部員としてこっそり楽しんでみようという意図はあったと思う(この点は古典部シリーズ1冊目『氷菓』においても考えられるところ)。
その他
- 入須先輩が『愚者のエンドロール』編で言及していた話、どんなに努力してもレギュラーになれない補欠と、勝利して「運が良かっただけ」と答えた天才の話。里志とホータロー、田名部さんと陸山さんの関係を見ていると、ふと思い出した。
- 『愚者〜』では天才側の挙動が問題になっていたが、この『クドリャフカ〜』では補欠側の挙動や心理にスポットが当たっていた。どうしようもない実力差を見せつけられた人間がその後どのように立ち回るか、そのキーワードが「期待」。
- 一連のエピソードで一番注目できたキャラクターは里志ですね。自分は結論を出せないデータベースだと自覚していたはずなのに、祭りの熱気に当てられたのか身の程知らずな挙動に出てしまう、そこにホータローへの嫉妬や自分への苛立ちやら、ふと見せる表情からいろいろと伺えて面白かった。
- いろいろと挫折感を味わった経緯など、摩耶花も里志に近い立ち位置だと思う。一方のホータローや千反田さんは自分自身が見えているんだか見えていないんだか。
- 『愚者〜』と同じく、名前は出てくるけど一度も姿を現さない人物(安城さん)の配置も古典部シリーズらしいところか(原作5冊目にもそういう趣向があるので)。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2008/05/24
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 184回
- この商品を含むブログ (210件) を見る
『氷菓』16話について。
以下、メモ的に。
- 原作3冊目『クドリャフカの順番』編の5話目。文化祭も最終日の3日目。
- 前回の15話までに見えてきたのが以下の流れ。
- 今まで無関係に見えていた(1)〜(4)の流れが関連性を持ち始めるのが、今回の16話。
文集とわらしべプロトコル
- (1)と(2)は文化祭初日からリンクしているのだけど。
- 店番をしているホータローのもとにやってきたのは姉・供恵。
- 原作ではホータローが席を外した隙に部室に入ってくるのだが、アニメ版では直接の対面。
- ともあれ、以前からの趣向通り顔出しなし。
- 供恵が手鏡との物々交換として差し出したのが漫画「夕べには骸に」。
わらしべプロトコルと「夕べには骸に」
- 部室に戻ってきた千反田さんがさっそく食いついてくるの図。
- 思わず身を仰け反らせたホータローの視線が千反田さんの胸元に・・・これはアニメ版の演出。
- もっとも千反田さんはお色気作戦をするつもりではないのですが。
漫画「夕べには骸に」と連続盗難事件
その他の描写について
- 文集宣伝のために放送部へ立ち寄った千反田さんと、部長の吉野さん。
- 吉野部長の声担当はキャラクターと同姓の吉野裕行さん。それはともかく目つきと手つきが何かいやらしいのですが・・・
- 犯人逮捕を狙って張り込み中の「探偵」たち。
- 里志の隣にいるのがライバルの谷くん、向かって左には「愚者のエンドロール」編に登場した羽場さんの姿も(里志に背を向けているのは、映画製作で古典部アレルギーを発症したせいか)。
- 漫研でのハプニング。ちょっとした悪戯心で摩耶花に向かって水をかけようとする女子。
- この手の嫌がらせをするのは例のコスプレ一派(ボカロ)かと思いきやさにあらず、まあ河内先輩が睨みを利かしている間は下手な真似ができないのかもしれないが、漫研の人間関係は難しそう。
- 1日目からの衣装から察するに、摩耶花は古い漫画作品にも造詣が深くて先輩たちにも一目置かれており、同時に彼女のことを「1年生のくせに生意気だ」と快く思わない連中も少なくないのだろう。
- 摩耶花が「コスプレ」という言葉を嫌がるのは、決して自分はお祭り気分を盛り上げるために着ているんじゃない、好きな作品やキャラクターへのリスペクト表明なのだ、という思いからではなかろうか*2。
- ともあれ、このハプニングがあったために千反田さんとばったり再会、探していた「夕べには骸に」とも再会できたわけで。
最後に
- 今回は細かい描写をのぞけばほぼ原作に沿った展開。原作を読み返しながら「よくできた作品だなあ」と改めて感心した。
- 上述した4つの流れが関連を見せていく展開はもちろんのこと、里志や摩耶花がみせる挫折感も見逃せないところ。努力したからといって必ずしも実を結ぶわけではないという厳しい現実、さりげない部分かも知れないけれどここが古典部シリーズの味わいでもある。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2008/05/24
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 184回
- この商品を含むブログ (210件) を見る