『ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル』

本日、京都みなみ会館で見てきました。
1970年代のイギリスで活動をスタートしたロックバンドDr.feelgoodの軌跡を追ったドキュメンタリー作品です。
バンドのメンバーは全員、イングランド東部のエセックス州キャンベイ島の出身。キャンベイは海に近いこともあって保養地として利用されていたこともあるそうですが、製油所が建ち並ぶ場所でもあり、あまり住む環境としてはよろしくない印象も受けました。外部の人からも「キャンベイの人間は気が荒い」などとよろしくない風評をもらったようで。ただ、彼らはバンドのデビューにあたって、そうしたキャンベイのイメージを逆手に取り、アメリカのニューオーリンズになぞらえて「テムズ・デルタ」と称するアピール作戦をやったそうです。
リー・ブリロー(Lee Brilleaux,ヴォーカル)の「ブリロー」は、石けん会社の名前が由来で、それをニューオーリンズ風に綴りを変えたとのこと。ぼくは、綴りからてっきりフランス系の人なのかと思っていましたが、芸名だったのですね。
リーはハウリン・ウルフに傾倒していたらしく、60年代にデビューしたストーンズがそうであったように、ドクター・フィールグッドもまたブルースの影響を強く受けたロックをベースにしています(ピーター・バラカンによると、後続のパンク・ロックにはほとんどブルースのテイストがないそうですが、この違いも興味深いところです)。
デビュー後のバンドは、イギリスのみならずヨーロッパやアメリカでも人気を博したのですが、しだいにウィルコ・ジョンソン(ギター)と他のメンバーの間に溝が生じてしまいます。作詞・作曲も手がけるウィルコはどちらかというと自分のプライベートな時間をしっかり確保したいのに対して、他の3人はライブの後も酒飲んでどんちゃん騒ぎに興じたかった、というスタンスの違いもあり、ことウィルコは多忙なツアー生活の中で精神的にかなり参ってしまったようで、3枚目のスタジオアルバムを出した後にバンドを脱退。
映画では、ウィルコ脱退後のドクター・フィールグッドについてはサクッと触れる程度、最後までバンドに残ったリーの死までを追っていました。映画の中では、リー以外の3人が集まって語らう場面あり、ゲストヴォーカリストを加えてバンド演奏をする場面ありで、かつてのわだかまりは残っていないようですね。
ウィルコ・ジョンソンといえばピックを使わないギター演奏が特徴的ですが、本人によると「もともと左利きだったのに右用ギターを弾くことになったので、うまくピックを使えなかった」という経緯があるそうです。そういえば、ドクター・フィールグッドに影響を受けたジョー・ストラマーも左利きでしたね。
ウィルコ在籍時の映像はあまり残っていなかったせいか、同じライブ映像の使い回し、再現ドラマ風、いにしえのギャング映画風の演出挿入など、作品構成には苦心しているように見えました。ライブ映像も、既発のDVDに収録されているものが多く、個人的には新鮮味はなかったけど、あのガツガツしたサウンドが大きめの音量で流れてくるとやっぱり気持ちよかったです。
ぼくは、8年前に京都の磔磔ウィルコ・ジョンソンのライブを見ました。サウンドはもちろんのこと、不思議な水平移動(蟹歩き?)や、マシンガンギター(ギターをマシンガンのように構えながらタタタ、タタタと3連カッティングをする)のパフォーマンスを目の当たりにできて感激でした。

Dr.Feelgood時代の"You Shouldn't Call The Doctor"。キレのありすぎるウィルコのアクションは必見です。