映画『ハル』を見た。

4月の頭まで『たまこまーけっと』のことを書いて以来、ブログのほうは2ヶ月ばかり留守にしていました。
さて、今回鑑賞した作品『ハル』は、上映時間50分の「中編」にカテゴライズされる長さのアニメーション。途中、唐突な展開に戸惑い、もう少し長い尺だったら話の流れを理解できたかも・・・と思うところもありましたが、映像(とくに背景)の美しさ、見慣れた京都市内の光景には概ね満足できました。

作品の背景描写について

鑑賞中に気付いたところを列挙していくと、四条通鴨川デルタ、出町柳駅錦市場、四条木屋町、夷川発電所、錦天満宮などなど。劇中の神社については一見してどこだか判別できませんでしたが、公式サイトの情報によれば八坂神社とのこと*1
作品前半では市街を見下ろしたカットが出てきましたが、たぶん大文字山からの俯瞰でしょうね。

上の写真は5月に山登りをした際、大文字山の火床付近から撮ったものです(山頂からだと木々が視界を遮ってしまいます)。自分の経験と重なる風景が期せずしてスクリーンに出てくると嬉しいものです。
あと、亀の形をした飛び石のある鴨川の描写も目立ちました。冒頭のシークエンスでは川に流される少年の帽子にカメラを置いたようなショットがありましたし、クルミの自宅シーンでは床スレスレの低いカメラアングルなど、アクセントとして面白い構図が楽しめました。また、中盤以降に出てくる疏水の場面では水の描写がとても綺麗だったと思います。
クルミの自宅は、昔ながらの木造建築。台所近くに吹き抜けがあったり、坪庭があったりするところは『たまこまーけっと』の北白川家にも見られる描写でした。自宅の場面ではバックに叡山電車と思われる走行音が流れていましたが、公式サイト情報だとロケーションは西陣だとか。冒頭には「貴船口」の駅看板も見えたものの、現実の位置関係が必ずしも反映されているわけではないみたいですね。
祇園祭のシーンも出てきましたが、鉾が細い通りを抜けていくところは新町通でしょうか(昨年ぼくは御池通から山鉾巡行を見ていましたが、残念ながら鉾が新町に入っていくところまでは追えませんでした。機会があればトライしたいところ)。
余談ですが、鴨川デルタや夷川発電所などは、7月から放映されるTVアニメ『有頂天家族』の原作小説にも言及されているのでこちらもチェックしたいです。

話の展開について(ネタバレ注意)

飛行機事故で亡くなった少年ハルそっくりに改造されたロボットが、事故以来ずっと心を閉ざしている少女クルミと交流を深めていく流れですが、2人の関係が恋愛要素を帯びていく展開がやや唐突に感じました。その違和感は(これまた唐突な)2人の立場逆転劇で何とか相殺しようと試みられているようであるものの、いささか説明不足の印象が否めなかったですね。
どうせなら、ハルとクルミの両方がすでに亡くなっていて、それぞれに似せて作られたロボット同士に恋が芽生える話に持っていくほうが意外性があって面白そうなんですが、クルミ役・日笠陽子さんの歌うエンディング曲の歌詞は終盤の「逆転」を踏まえたものになっているので、まあその線で納得するしかないのかと腑に落ちない部分もありつつ、曲はいい雰囲気でした。
あと何回か鑑賞すると(とくに作品前半の描写・展開について)そうか、あの時のあれはそういう意味だったのか!としっかり納得できるのかも知れませんが、1回見ただけでは戸惑いのほうが大きかったですね。
そうした違和感を抱きつつも、大切な人(亡くなった人)との思い出というのは、儚いというか夢のようなものであり、時が経てば自分の中でも不確かなものになってしまう・・・という部分をちょいとひねった演出で表現しようとしたのかなとか、そんな風に感じるところもありました。
細かいところだけど、介護施設にいるおばあちゃんたちの口調が関西弁風だったり標準語風だったり、統一されていないところが気になりました。ほかのキャストはみんな標準語口調なので無理に方言テイストを入れなくていいのにと思ったり。