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『けいおん!』高校編13(きららキャラット)

昨日「まんがタイムきららキャラット」8月号を入手しました。大学編と同様に高校編も学園祭ライブで終幕です。

はじめに

連載再開から(物語としては)半年しか経過していない学園祭シーズンで「完結」というのは個人的にやはり納得できないところですが、そのへんの感情的な部分は以前のエントリーに記しているのでここでは反復しません。また「なぜこのタイミングで作品を終わらせたのか?」という疑問についても憶測の域を出ないので割愛します。

最終話の印象

この13話で特徴的なのは、

  • 梓がリードヴォーカルを全うした。
  • 奥田さんがステージに立たず、裏方に徹した。
  • 梓が(唯をはじめとする)先輩たちと再会しなかった。
  • 連載スタート時点では「梓の語り」で始まったのに、なぜかラストは「山中先生の語り」で締めくくられる。

といったところでしょうか。
個人的な推測ですが、作者がこの話数で一番のポイントにしたかったのは「梓の充実感」だと思いました。
梓の歌唱スキルについては作品初盤から問題になっていましたし、楽器も歌も担当しない奥田さんのユニークな立ち位置も印象的でした。学園祭ライブでは梓が歌の部分でコケるんじゃないか、そこで奥田さんが急遽助太刀に回る(あるいは、梓の失敗を見越してあらかじめボーカロイドを用意しているという線も?)という展開もありそうな気がしていました。
作者がそういった展開を採らなかったのは、第一に「梓に実力を出し切った後の充実感を味わってほしかった」のであり、奥田さんについてはそのユニークなポジションで本分を全うしてほしかったためのではないでしょうか、結果的にそれは良い選択だったと思います。
唯と梓をはじめとする「大学組&高校組」の再会が描かれなかったのは意外でした(それを予感させる描写が前にあったので)。これについては残念な思いもあるものの、もし唯たちを登場させていたならば(ファンの期待に応える形にはなったとしても)先述した「梓の充実感」の色合いが薄れてしまい、作品全体としての印象が散漫な幕引きになっていたと思います。たとえ読者の期待を裏切る結果になったとしても、物語のラストに見せるポイントを絞り込んだ姿勢は評価したいです。
最終話で山中先生のモノローグ(心の声)を出す趣向はいささか唐突でしたが、このあたりは今まで軽音部員たちを見守ってきた先生の視点に作者の思いをダブらせることでシリーズを締めくくろうとしたのかも知れません。また、山中先生に「放課後ティータイムに負けず劣らずいいバンド」と語らせる部分には、作者が「限られた時間、紙面スペースの中で高校編としてやれることはやったぞ」という自分の思いを乗せたかったのではないかと思います。

高校編全体としての印象

個人的には8話、11話の印象が強くなっていますが、高校編全体としては「梓の物語」という印象が残っています。
単行本4巻の最終話で「い、今の軽音部より全然すごい部にしてやるです!」と意気込みを見せた梓が、新しい仲間とバンド活動をしていく中で自分自身の立ち位置や挙動に気づき、周囲との関係性に気づき、少しずつ変化を見せていくプロセスがこの作品のポイントだったと思います。その意味では、最終話でわかばガールズの5人、中でも梓の充実感や達成感にスポットを当てたのは良かったし、これまでに出てきた学園祭ライブ(ライブ終了直後も含む)の描写には見られない清々しさがありました(コミック版ならではのゆるい笑いも健在ですが)。
そうした点から見れば、先輩たちの卒業以降、梓が自分の中に抱えていたものが学園祭を通して一応の達成を見たところで物語に区切りをつける、こういう終わり方もアリかなと思ったりします。1年限りのプロジェクトとはいえ、わかばガールズとしての活動とその存在意義は大いにあったと、高校編とはそういう物語なんだと、自分の中では納得しようと思います。
ちょっと気になった点は、終盤にかけて1年生のスミーレや奥田さんが存在感を増していく一方で、3年生の憂と純がいくぶん影が薄くなってしまったように感じるところです。11話において憂と純が席を外したくだりに見られるように、作品のテーマを絞るにあたって彼女たちを「ちょっと離れたところから梓を見守るポジション」にとどめておこうとする意図があったのかも知れません。まあ、今後も連載が続くならば面白い描写がいろいろと見られたはずですが、7話の「平沢先輩も普通の女の子だ・・・」的な視点がもう少しあったらなあ、とは思います。

最後に

大学編が残念な幕切れに終わったこともあり、高校編についてもある程度覚悟していたのですが、予想外の展開もあって楽しめた最終話でした。高校編のテーマとなる部分を自分の中でつかめた感触が得られたのも嬉しい収穫。できればアニメ版の高校編も見たいですね。コミック版で描き切れなかった学外のロケーションや楽曲、サブキャラ、そこにオリジナルのエピソードも盛り込めば面白くならないはずはないので。
最後の最後になりましたが、かきふらい先生、今まで執筆お疲れ様でした。次回作も楽しみにしています。