映画『リンダ リンダ リンダ』再見/『けいおん!』についてなど
『リンダ〜』は2005年に劇場鑑賞してから6年ぶりのDVD鑑賞。
以前から指摘されている話ですが、
などの設定がアニメ版『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ライブアライブ」に借用されたのは見ての通りでした。
How to disassemble an atomic code: ハルヒ: 検証 ライブアライブとリンダリンダリンダ
How to disassemble an atomic code: ハルヒ:季刊エス16 涼宮ハルヒの憂鬱 山本寛インタビュー
両者の共通性については上記エントリが詳しいので、興味のある方はどうぞ。
ただ、個人的には(来月に劇場版公開が控えているから、というわけでもないけど)『けいおん!』との共通点が気になりました。
大ざっぱに挙げてみると、
- 軽音部の話だけど演奏・練習のシーンは少なめ
- 物語にドラマチックな起伏が少ない
- 練習ではイマイチなのに何故か本番に強い
- 内輪でウケるタイプの会話が多い
など。
細かい描写で言えば、
- 本番前に楽器を忘れる、出番に遅れる(1期12話)
- ギターを背負ったままズブ濡れ、スッ転ぶ(2期6話)
- 自宅でのドラム練習には読み終わった雑誌を使う(2期3話)
- ビデオ撮影でのセリフがED歌詞を彷彿させる(「ぼくたちは高校時代を思い出になんかさせないから」/2期後期ED"NO,Thank You!"の「思い出なんて要らないよ」)
- シュールな夢(武道館でラモーンズとピエール瀧に会う/ムギちゃんの眉毛がたくあんになる)
- 学校で徹夜練習・お泊まり(2期19〜20話)
- 夜の校内をうろうろ(2期19話)
- 演奏シーンに校内(廊下、下駄箱など)のショットを複数織り込む(多数)
など。
まあ、大きな共通点を1つ挙げるなら
- バンドやってる本人たちの「自己満足」に尽きる
ってところですね。
この映画もけいおん1期最終話も文化祭ライブで成功を収めて幕引きとなるわけですが、講堂に集まってくれたみんなに認められたから成功、というわけじゃないんですね。劇中で男子に「コクる・コクられる」がおシャカになったことも含めて考えると、これは本人たちの自己満足が達成できたゆえの「成功」というしかありません。
けいおん1期では、まだ同級生モブの存在感がほとんどなかったですが、ワーッ!と歓声が起きるのはつまり演奏してる当事者が「よっしゃ、やったぞー!」という充実感を視聴者により強く伝えるための演出効果なんですよね。どれだけ彼女たちの人気があるとか、支持されてるとか、そういうのは関係ない。観客が無反応なところでいくら充実感を覚えてもそれじゃ説得力ないでしょというだけの話。
ライブが成功裡に進んで多幸感のうちに幕引きになるのは、やっぱりけいおん1期的ですね。
2期になるとモブたちの視点も入ってくるし、父ちゃん母ちゃんも見てるぞ的な演出もあるしで、ちょっと印象が変わってくるんだけど、それでも最後には5人だけの感慨に回収される。
上に挙げた「ぼくたちは高校時代を思い出になんかさせないから/思い出なんて要らないよ」も個人的には気になったところですが、これはつまり「今、この時が充実してればそれでいいじゃない!」ということです。後になって振り返ってみれば別段どうっていうことはない話かも知れないけどそれはそれ。友達との気まずい行き違いや、どんくさい失敗も多々あれど、それを余すことなく映し出していく。ラストで感動やカタルシスを与えておしまいの話ではない。それを山田尚子さん的に「青春もの」と受け取るべきかどうかは分からないけど、両者とも作中キャラクターの可愛さを愛でるだけの作品でないのは確かだと思います。
その前に見た『スウィングガールズ』もゆるい作品だったけど『リンダ〜』と比べればずっと体育会系的なノリかもね。まあ20人近い人間が結束して音楽やるんだから、それぞれがてんでバラバラやってたんじゃ収拾つかないってのもあるけど、メンバーの音楽スキルが上がる、モチベーションが上がる、そういうポイントを要所要所に分かりやすく設けているし、それで県大会に出てその成果をばばーん!と披露するわけだから、どうしてもスポ根に見えますね。ラストのカタルシス成分多めだし。
『リンダ〜』ではペ・ドゥナがダントツに可愛かったです。
本作では韓国からの留学生という設定で、言葉がイマイチ通じないゆえのおかしさもあるんだけど、それ以外にもやたら眼をひんむいたり、猫背でキョドってたり、天然なのか何なのか良く分からないリアクションが多いけどそこがいい。