国立国際美術館で「絵画の庭」展

大阪・中之島にある国立国際美術館で開催中の「絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から」を見てきました。この美術館の最寄り駅は京阪の渡辺橋駅なのですが、京都から中之島線行きの電車に乗らず、しかも京橋で乗り換えするのを忘れたので淀屋橋から川沿いを歩いて到着。昨日は天気も良かったので、散歩も快適・・・と言いたいところだけど黄砂のせいか空気が何となくほこりっぽく感じた。

とりあえず気になったアーティストの作品について一言感想。

奈良美智

チケットやポスターに作品が採用されているだけあって、奈良さんだけは別格扱いなのかな。地下3階、地下2階の各展示フロアでも、階段のすぐそばに作品が配置してあって、この展覧会の目玉(客寄せ?)になっているようだった。展示作品数は少なく、おなじみの目がつり上がった少女をモチーフにしたものがほとんど。「After the Acid Rain」では少女の瞳の部分にキラキラした素材を使っていてとても綺麗だった。今回は奈良さん以外のアーティスト作品でも少女を題材にしたものが目に付きました。

加藤泉

お腹のあたりが少しぷっくりしたお猿のような子供がモチーフ。頭のあたりに白い丸が点々と付いているのは仏様みたいだな。ほのぼの。

後藤靖香

モノクロの力強いタッチで劇画風に描いているのは旧日本軍の若い兵士(学徒兵)のようだった。塹壕の中で不安・苛立ち・希望がないまぜになった表情にインパクトがある。「芋洗」なんてタイトルの作品もあり、ふと江戸川乱歩の「芋虫」を思い出した。ああ、この若い男たちもいずれ爆弾で手足をもがれちまうのかと。

森千裕

紙幣をコラージュして他の素材とミックスした作品が多い。その名もずばり「お金の絵」という作品もある。ロザリオをつけた女性の上には千手観音のようにたくさんの手を広げた男性がいて、その上には五千円札の裏に描かれた山・・・なんだこれは、拝金主義?

花澤武夫

ビビッドな色使いの上に、垂れた絵の具が良い感じのエフェクトになっている風景画「暁霧(熱帯動物園)」が良かった。CDやレコードのジャケットにしても良さそう。

岩永忠すけ

パステルカラーのほんわかしたテイストが気に入った。タイトルは「ひとつめ小僧」だったか、カンディンスキーの作品でもこんなのがあったように思う。

中山玲佳

細い枝の上に、分厚く塗りたくったアクリル絵の具が「梅の花」を思わせる趣向が面白かった。季節柄、いい感じやね。
季節柄とはぜんぜん関係ないけど、カラフルな原色絵の具がタレタレになったところをバックにモノクロのシマウマが描かれている「Safarism-Zebra」はとてもカッコイイ。これは好き。

加藤美佳

ものすごく写実的な作品ばかりです。今回の目玉は「カナリア」。大きく目を見開いた少女の、睫毛やほくろのひとつひとつまで丁寧に描いてあって、可愛いというよりちょっと怖い感じだった。近くを通りかかった若いカップルが「これって本当にいる女の子なんやろか」「そらホンマにおる子やなかったらこんなに描けへんで」とコメントしていたが、いや、これは非実在青少年、というか非常に良くできたダッチワイフなんじゃないでしょうかね。ホントにこんな子がいたらホントに怖いですよ。

小林孝亘

加藤さんの作品がダッチワイフなら、こちらはダッチハズバンドか。「Sunbather 8」に描かれた坊主頭の海パン男子は、皮膚表面がゴムやビニールのようにツルッとした感覚で人間の生臭さが微塵も感じられない。この絵は割とほのぼの。

草間彌生

草間さんといえばピンク色の髪で眼がギョロッとした写真を何度か見かけたことがあるのだけれど、絵画作品を見るのは初めてかな。目のような、葉っぱのような、微生物のような、不思議なモチーフがどんどん増殖していったような作品が多く、ちょっと気持ち悪いけどユーモラスでもある。どこかジャン・コクトーに似ていると思った。

牧嶋武史

トランプのカードで作った三角タワーの周りに動物や少年少女たちが死んだように横たわっている「Replay」。物語を感じさせる絵だなあ。

町田久美

細い線で描かれた人形のような少年が主なモチーフ。耳から足が飛び出てきたり、目から素麺のような涙が垂れていたり、不思議な感覚。どこか「Y氏の隣人」の登場人物のような無機質さもある。

会田誠

ローティーンの少女たちを扱った作品ばかり。カンバスの中の少女は、とても綺麗に描かれているのだけれど無機質、というか一定のフォーマットで生み出された「製品」のようでもある。滝の周りでスクール水着の中学生が戯れる「滝の絵」は、見上げるほどの縦長カンバスに描かれていてなかなか壮観だった。ミケランジェロの「最後の審判」を少女バージョンで改作しても面白そうだな。
もうひとつの大作「ジューサーミキサー」は、遠くから見るとモヤシが入ってるのかなと思いきや、ミキサーの中にはおそらく何千体もの全裸少女がぎゅうぎゅうに押し込まれている。これは気持ち悪いなあ。培養液に漬けられた綾波レイをふと思い出したけど、それどころじゃないよ。この人の頭にはものすごい妄想とか観念が渦巻いてそうだ。怖い。

坂本夏子

こちらも少女モチーフが目立つ。「Overflow」では、血の海のそばを歩く少女たちが出てくる。その顔は少女というより老婆に近い気もするのだけれど、不思議とほのぼのさせられる。

O JUN

ふるちんでどすこい。

タカノ綾

こちらも少女モチーフ。手足がひょろっと伸びた細い女の子はキャラクターとしてしっかり確立してますね。