自分のギターを「かわいい」と言える日は来るのか

週末に市内の某楽器店でフェンダーUSAのストラトキャスター(アメリカン・デラックス)を入手した。

楽器屋で試奏した時はネックの太さがいくぶん気になったが、家に帰って弾いているとだんだん左手にしっくり馴染んでくるようだ。これよりもう少し細めのテレキャスターも持っているけれど、それよりも弾きやすいと思う。
トレモロアームはねじ込み式ではなく、上からガチンと押し込むタイプ(ブリッジのお尻から細い六角レンチでアームのしまり具合が調整できます)。ブリッジは2点支持タイプでペグはロック式。ジェフ・ベック・モデルのようなローラーナットは付いていないものの、割とチューニングは安定しているとのこと。
ぼくは単身でマンション住まいをしているためアンプにつないでデカイ音を出すわけにはいきません。それで以前からヤマハのアンプシミュレーター兼エフェクターのDG-Stompを使っているのだが、どうもディストーション系の回路がいかれたらしく、クリーントーンしか出なくなっています*1。ちょっと寂しい。新しいエフェクター(最近出たZoomのマルチが良い感じだ!)買うまでベンチャーズでも練習するか。
それはそうと、このギターが良いのは赤みがかった独特のサンバーストフィニッシュなんですね。試奏しながら何の気なしに「これって色っぽい(カラーリング)ですよね」とつぶいやいたところ、楽器屋の若い店員が「ああ、ギターを女性になぞらえて形容する人は多いですしね」と一言。あ、いや、別にそういう意味で言ったのではないのだけどおいおい。
ぼくの脳裏にふと浮かんだのは、

けいおん! (2) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! (2) (まんがタイムKRコミックス)

梓からなんで(重くてネックの太い)レスポールを買ったのかと聞かれた唯が
「かわいいから!!」
と返すシーン。
レスポールに関しては、その丸みを帯びたボディ形状から女体チックで色っぽいと形容する人は多い。それとは逆に無骨で男臭いイメージの強いギターでもある。ぼくだとジミー・ペイジやスラッシュがくわえタバコでガンガン弾いている図が容易に想像できる。どちらにしても「かわいい」という表現とはほど遠い。最近はボディにキティちゃんやディズニーのキャラクターをあしらったフェンダー系のギターが出回っているけれど、そんなトッピングがあるわけでもないギブソンレスポールを「かわいい」と言い切る感覚は何なのか、といえば、女の子的な感覚としか、ぼくには言いようがない。
けいおん!』についてはアニメを見たことがなく、最近になって単行本を読んでみた程度なのだが、全体を通して女の子的な「かわいい」感覚に満ちている作品だと思う。出てくる女の子たちの見た目がかわいい、というだけでなく彼女たちの感覚的なかわいさ、そうした感覚でつながり合えるコミュニケーションの心地よさに(男性読者として)一種の「あこがれ」を感じさせる作品でもある。
さて、ぼくには自分のギターを「かわいい」と言える日は来るのか、といえば当面は不可能に近いだろう。先の楽器店では赤色のフェンダームスタングも置いてあって、それを「あずにゃんの使ってるギター」ということで「かわいい」と言うことはできるかも知れないけれど、それはあくまでキャラクターを通した上での「かわいい」だから、唯の感覚とはまったくの別物であろう。もしかすると、10年ほど前に椎名林檎が使っていたデューゼンバーグには「かわいい」という形容が付加されていたかも知れないが、あのギターはレトロチックなデザインがあるから「かわいい」のであり、これまた唯的感覚とはずれている。うーん、何と言えばいいのかといえばつまり、女体チックだったり男根のメタファーだったり、およそ「かわいい」とは縁遠いギターを無根拠に「かわいい」と言ってのけるのは可能か、という話をしてみたいのでした。
まあ、いろいろ考えてみたけれど、自分のギターを「かわいい」と言えるには、やはり普段から「かわいい」的感覚でつながれる同志を作っておくことが必要なのかも知れないな。

*1:後日、エフェクターの設定状態が変わっていた(スピーカーシミュレーター機能がオフになっていた)ためと判明し、ディストーションサウンドは無事復活しました。