『冬冬の夏休み』

えーと、この映画DVDを見たのは約1週間前、台湾旅行に出かける寸前に見てたんだよね。旅行中のあれやこれやで映画の印象がやや薄れてしまったのはやむを得ないか。とはいえ、なかなか清々しい作品だった。ぼくが買ったDVDボックスの解説には『となりのトトロ』との類似点が挙げられていたけれど、そう言われると確かにそんな気もするし、8月に見た『サマーウォーズ』のことを思い出したりもする。まあ、何はともあれ都会育ちの兄妹が田舎のおじいちゃん&おばあちゃんの家で過ごす夏休み、こりゃあ何とも日本人の琴線に触れる物語設定ですなあ。
ただ、この映画は単純な田舎讃歌、ノスタルジー讃歌ではなくて、主人公・冬冬(トントン)の視線を中心に据えつつ、周囲の大人と子供の人間関係を巧みに見せている。知的障害の女性・寒子(ハンズ)が出てくる場面が特にそうだけれど、大人・子供にかかわらず人間の薄汚い部分も如実に描かれている。そのあたりをできるだけ色を付けずに描写していくところは流石ホウ・シャオシェンですね。
たとえば、子供の目から大人の汚いところ、狡いところが見えたとして、そういった部分を子供は「大人は汚い、狡い」とバッサリ批判しちゃう存在なのかといえば、宮崎駿的にはそれでOKかも知れないが、本当の子供は決してそういう存在ではないわけで、いつしか自分も汚くて狡い大人の側に身を置いてしまうのであって、それは自分自身の来し方を振り返れば分かることですね。まあ、そんなことを感じたりもする。
DVD収録のインタビューで寒子役の女優さんが語っていた内容によると、ホウ・シャオシェンは役者、とくに子役にはあれこれと演技の指示をせずに、彼らの中からふと出てくるものをじっと待っているタイプの人らしい。これは日本の是枝裕和にも通ずるアティテュードですなあ。