『けいおん!highschool』について。
先月末に入手していた単行本を読んでの雑感です。
唯と梓が再会しない件について
大学組と高校組の出会い、とりわけ唯と梓の再会描写は、単行本の描き下ろしパートには出てくるんじゃないか(それがないと物語が締まらないだろう)と思っていたので、それがついに出てこなかった点には、どうしても引っかかってしまいました。
高校編の11話では梓が
「先輩たちとは学園祭まで会わないって決めてるもん!ライブでびっくりさせてやるんだ!!」
と宣言していますので、どんなに遅くても最後の最後には(唯が「あずにゃん会いたかったよ〜!」と梓に抱きつく的ベタな描写は避けるとしても)大学組の姿を出すのだろうと予想していたのですが、それがなかったのはなぜか。稚拙ながら作者の思いを推測してみました。
(1)作者が単に忘れていた。
(2)途中で気が変わった。
(3)もともと再会を描く予定がなかった。
(1)は多分ないと思います。もし連載中にど忘れしていたのなら、描きおろしに盛り込めばいいだけなので。
(2)の線はもしかしたらあるかも知れません。唯と梓の再会で締めくくる予定だったけれど「これって大方の読者が予想しそうな展開じゃない?そういうのに引っ張られる形で描いていくのは何かイヤだなあ」と思い直したとか。周囲の期待に沿う形で「描かされる」のは嫌だと、連載当初から大学編と高校編の登場人物をきっちりセパレートしていたポリシー*1を意地でも貫こうと考えたのかも知れません。
(3)これには根拠がありまして(大学編11話における唯のセリフ)
「高校の学祭が終わるまでは邪魔しちゃ悪いかなって」
これも憶測の域を出ませんが、梓として先輩たちにぜひぜひ高校の学祭ライブを聞きに来てほしかったのだけど、唯は「あずにゃんは学園祭が(完全に)終わるまで会ってほしくないと思っている」と勘違いして高校に出向くのを控えたとか。つまり唯と梓の気持ちがすれ違ってしまったと・・・そのあたりまで読者が推測しなければならないのはちょっと不親切な展開だと思いますが、話の筋としては一応通っています。
高校編の特色
大学編と比べると、新加入の1年生2人を含めてキャラクターが活き活きしていると思います。特に新キャラの描写を見ていると、たぶん作者は大学編より高校編に力を入れていたんだと思いますし、とにかく「わかばガールズ」5人が自発的に頑張っている部分を描きたかったのだと思います。単行本の描きおろしパートを大学編と同じく冒頭に持ってきたのも、その方向性ゆえなのでしょう。
また、もし作品の途中で大学編のメンツが入ってくると、従来の関係性反復にスペースを割かれる分だけ、彼女たちの活き活きした部分が一気にかすんでしまったことでしょうね*2。最後まで「再会」のエピソードを回避したのは、作者にそうした懸念があったからなのかも知れません。
既存キャラクターの設定を少しずつ変化させていたところも面白かったです。梓のツッコミはちょっとキツいくらいにパワーアップを見せていて、それに呼応するように山中先生はうざいくらいのボケっぷり、万能選手の憂も意外なところでボケていますし、純ちゃんはアニメ版でのマイペースな性格設定が上手く活用されていました(かつての唯や律のような「勉強できないキャラ」にしていないところも良かったです)。大学編のほうをあまり悪く言いたくないのですが、既存の関係性から抜け出せない点&新キャラが弱い点で大学編は残念だったなと思います。
前回のエントリーでは、大学編を「唯から梓に向けた近況報告」と書きましたが、高校編がそれに対応する形で「梓から唯への返信」になるかと言えばかなり微妙なところです。1話目こそ梓の語りから始まっていて、以降も梓が唯の存在(不在?)をしばしば意識しているのは明白であるものの、最終話は山中先生のモノローグで幕引き、描き下ろしパートは純ちゃん主導、物語の統一感を見ればかなりギクシャクしていてスマートさに欠けています。
まあ、見方をかえれば高校編は「梓の物語」のようでいて「群像劇」なんだと、そういう風にも受け取れますが。
最後に
学園祭のタイミングで幕引き・・・というのはこれまでに何度も書いたことですけれど、このけいおんシリーズがこれで本当に終わりなんだなと改めて思い直すとやはり寂しい気分です。大学編に比べて(っていちいち比較するのもうイヤだな)ブツ切り感はないので、梓をはじめ軽音部の子たちがこの先どうなっていくのかという不安はほとんどなくて、まあ何とでもやっていけるだろうと、あっけらかんとした安心感を持っているくらいなのですが、ファンとしては年末に映画版のガイドブックが出るのを待ってこれで一区切りかと、それだけですね。
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