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『けいおん!college』について。

先月末に単行本を入手していたのですが、1週間ほど経って自分の中で思うところがまとまってきたので書いておきます。

他バンドの存在、ライバル意識

この大学編について注目する所はいろいろあると思うけれど、放課後ティータイム(以下HTT)以外のバンド*1がコミック版で初めて出てきたのは大きいですね。
アニメ版(映画も含む)では「デスデビル」や「ラブ・クライシス」などのバンドがちょくちょく出てきますが、これまでコミック版では描かれなかった部分を大学編で補完できたのではないか、と思います。対比してみるならば、デスデビルに相当するのが部長・吉井さんのバンドであり、ラブ・クライシスに相当するのが恩那組*2
デスデビルについては、アニメ1期4話の合宿回で澪がその存在を強く意識していたし、唯がギターソロの耳コピを試みる描写もありました。すでに卒業した先輩のバンドなのでライバル視とまではいかないけれど、自分たちのモチベーションを上げる材料にはなったのでしょう。
1期14話に登場するラブ・クライシス他のバンドに対しても、プロ志向などの面で即HTTのライバルにはなりえないけれど、HTTの知らない世界を見せてくれる存在であり刺激になったのは間違いないと思います。
もちろん、これらはアニメ版における創作なので、原作コミックを読む上では無視すべき存在かも知れません。でも「もしかすると原作者がアニメに登場するバンドを見て何かしらインスパイアされたのでは?」と想像するくらいはいいんじゃないでしょうか(ぼくは勝手にそういう想像をしていますが)。ともあれ、アニメ版における他バンドがHTTにとって「気になる存在・刺激材料」くらいだとすれば、大学編ではそれが「ライバル」として感じられるかどうかの微妙なレベルになっています。
で、コミックの大学編なんですが、HTTの中では一番マイペースに振る舞ってきた唯が晶にライバル意識を見せるくだり、これがとても面白かったです*3。もっとも唯からすれば、恩那組こと晶に関しては「ライバル」であると同時に「ベタベタくっつきたい対象」でもあるのですが、このアンビバレントさが唯ならでは。ほかのメンツではこうは行きません。また、今まで身近に存在しなかったライバル的な相手に対抗心を燃やしてみる・・・その行為自体が唯にとっては新鮮で面白かったのでしょう、きっと。
まあ、ライバル云々の表現は特に出てこなかったようですが、今までの高校エピソードにはなかった要素として目を引くところであり、自分の中ではちょっとブーストされた印象として残っています。

大学編とは?

単行本を読んでいてふと思ったのが、大学編のストーリーは「唯から梓に向けた近況報告」なのではないか、ということ。
コミックの中でそういう文体をとっているのは1話と5話のみなので、それを根拠として語るのはいささか頼りないところですが、大学編にいっさい梓を登場させない構成の真意は、ひょっとしたら「梓は、唯からのメッセージの受け手だから、出すわけにいかない」なのではないか。そう考えると少なくとも自分としては腑に落ちます(蛇足になるけれど、恩那組の描写ウェイトが晶に偏っているのも、唯の関心対象が主に晶だったからと考えるとしっくりきます)。
高校編の描写によれば唯と梓は卒業後も連絡を取りあっているようですし、梓は唯からの電話やメールを通して自分がまだ知らない大学生活についていろいろ想像をふくらませてみたり、今まで自分が在籍していたHTTを客観的に見てみたり、HTTを仮想的なライバルとして意識することで自分のモチベーション向上を試みたり、そういう機会を得られたのだろう、それが高校編における梓の描写(とくに後半)につながっているのでは、と・・・これもまた勝手な想像ですけど。
そんなことを念頭におきつつ、10月末に発売される高校編の単行本を読んでみようかと思っています。

最後に

前にも書いたとおり、1年生の学園祭シーズンで物語に幕を引いてしまうのは納得できないところですが、作品が終了した経緯を「作者がもともと乗り気ではなかった」とか「大学編と高校編を両立させる企画自体が失敗だった」とか、そういう形で納得するのもまた、納得できないところであります。アニメ放映途中からとはいえ、このけいおんシリーズにハマった者としては、できることなら自分の中で美しく納得して受け取りたい、そんな気持ちがあるんですね。それは、事実をねじ曲げた納得の仕方なのかも知れませんが、何というか大人の事情を忖度するのではない形で、作品世界に対してひと区切りをつけたいというか。

けいおん!  college (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! college (まんがタイムKRコミックス)

まあ、欲を言えば、教員免許をとった唯が母校に錦を飾るところまで視野に入れてほしかったんですけれど・・・

*1:夏フェスに描かれるバンドは除きます。

*2:どちらも3人組かつ律つながりですが、高校時代に「恩那組」というバンド名を思いつくくだりは単行本2巻で言及されています。

*3:6話および9話を参照ください。