『氷菓』21話について。
以下、メモ的に。
- 19,20話と同じく原作4冊目『遠まわりする雛』からの短編。
- 一言でいえば「バレンタイン回」です。
中学時代の摩耶花
千反田さん
- 2人が雑貨屋に立ち寄るくだりはアニメ版の演出。
- 摩耶花に「ところでちーちゃんってさ、好きな人いないの?」と聞かれて慌てる千反田さんの真意はいかに・・・?
- 登校のシークエンス、ここでもバレンタインのことが話題に。
- 千反田家では、親しい人にお中元もお歳暮も贈らないのでバレンタインのチョコも割愛、らしい。
- 原作では笑顔でサラリと言ってのけるところ、アニメではかなり緊張した表情だった(いろいろと想像させますな・・・)。
- 画面の右端には、軽音部員らしきギターケースを担いだ生徒がチラッと映るのだけど、男子でした*1。
- 部室に置いていた摩耶花のチョコが盗まれたのは自分の責任だと、校内を探し回ろうとする千反田さんがホータローに手首をつかまれる場面。
- 涙の粒がキラキラと宙を舞う描写、今までにない美しいシークエンス。
- これまで、千反田さんがホータローの手首をつかむ描写はあったけど、その逆はなかったですね*2。
摩耶花は変わったのか?
- 制服の上に着ているコートは昔と同じのようですが・・・高校生の摩耶花です。
- 里志に渡す予定のチョコがなくなったと聞いて、寂しげに笑ってみせる場面。
- 冒頭の表情と対照的だけれど、昔に比べると性格が丸くなったのか、どうか・・・?
- そういえば、里志も中学時代はホータローにゲームで負けると怒りを隠さなかったそうだし(今は笑って流す)。
里志とホータロー
- 摩耶花のチョコはすでに里志が受け取っていた、そのことを千反田さんや摩耶花に言わなかった里志をホータローが問い詰める。
- 里志に対してここまで強く向かっていくホータローも珍しい。千反田さんの一本気な性格に感化されたのかどうか。
摩耶花と千反田さん
- 上の男子チームと同じく、橋の上での会話。
- 里志がチョコを受け取っていたことを摩耶花も感づいていた・・・という流れ。
- このくだりはアニメ版のオリジナル。原作では以下の描写。
この手の話は、里志が伊原に打ち明けていたのだとしてもやはり、野郎同士のものなのだ。その分、たとえば千反田と伊原も、女同士の話をしているのだろう。そしてその話は俺に漏らされることはなく、里志もまた今日の話がやつの全てではなく、もちろん俺も、里志に全てをさらけ出すわけではない。
米澤穂信『遠回りする雛』文庫版p.342-343より引用
- ホータローの一人称語りで進められる小説版ではフォローできないところを上手く拾っていたと思う。
- このあと、夜になってから里志が摩耶花に電話をかけるくだりもアニメ版の演出。里志を悪者にしたくない制作スタッフの配慮だろうか。
その他
- 今回の「犯人」は里志だったけど、その犯人探しの真相を「男同士の秘密」にしておく流れは「クドリャフカの順番」と似ている。
- 里志からすれば、摩耶花の好意を無にする気は毛頭ないけど、あの大きなチョコを抱えて持って帰るのは気恥ずかしいし、そのことを周囲に説明するのも嫌だ、自分だけの問題として処理したいところを千反田さんに出くわしてしまい、ホータローにも釈明らしきものを要求されるし、予想外の展開だったのだろう。
- 橋の上で「こだわることをやめた」云々を語ったのは、里志ならではの煙に巻く言い回しか、単にとっさの言い訳だったか。
- 古典部シリーズのキャラクターは「何でも隠さず腹を割って話す」タイプの親しさではなく「必要以上に相手の内側に踏み込まない」タイプの親しさを見せている、そういう距離の置き方が米澤作品の特徴だと思う。
- ホータローから見た摩耶花のイメージは般若らしい(確かに執念深そうではある)。
- しかし、般若(能面)の本と、般若心経(仏教)の本を並べてディスプレイするのはいかがなものか・・・図書委員でもある摩耶花の意見を聞いてみたいところ。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
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- いよいよ来週で最終回。