『氷菓』7話について。

以下、メモ的に。
今回のエピソードも『遠回りする雛』からの短編。

動物の姿が目立っていた映像演出

  • 合宿のバス車中。窓ガラスを這っていたてんとう虫は里志の髪に留まり、ホータローはそれを目で追う。
  • ホータローと千反田さんが露天風呂に向かう道すがら、電線に雀らしきものが一羽止まっている。一羽去ってまた一羽。
  • 風呂の流しバケツに「ケロリン」の文字。カエルが一匹飛び跳ねる。

その他演出

  • 梨絵(摩耶花の親戚、善名姉妹の姉)の怪談では、薄暗い水彩画風の描写。2話の演出に近い。
  • 謎解きシークエンスでは、ホータローの考察を図式化したシンプルで分かりやすい趣向。ボウリングのボールはアニメ独自の作画。

リアル千反田さんはやっぱりうざいのか?

  • ホータローに合宿行きを提案する千反田さんの顔に「行きたい」の文字が黒々と浮かぶ。
  • 俗に「顔に書いてある」というが、それは本心を明確にしない人間についての表現であって、ホータローに対してはっきり「行きましょう!」と意思を明らかにしている千反田さんにこの演出はただの重複、センスがないと思う。
  • 好意的に解釈するなら、前回6話の「増殖ちびえる」と同じく、ホータローの「やっぱこいつウザイわ」とのいう印象を示したものかも知れない。そういう意味では前回の反復と言える。

ホータローの思い描く千反田さんはまた別で・・・

  • 女湯にいる千反田さんは、ホータローの想像図。
  • その直後にホータローは「湯あたり」で意識を失う。
  • 本人は「バス酔いが残っていた」と語るが、千反田さんの入浴姿に「のぼせた」可能性も大いにあり(このあたりは原作より一歩踏み込んでいる描写)。
  • やはりホータローの思い描く千反田さんは、彼の中で美化されている模様(もっとも、その後で介抱しにきた千反田さんの接近に焦る描写もあるけど)。
  • ホータローは千反田さんに異性としての関心、もっと言えば恋愛感情を持っているのかどうか・・・と視聴者に勘ぐらせる演出は今後もありそう。

イメージと現実のギャップとか(1)

  • アバンにて「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というテーマが提示される。
  • これは「イメージと現実のギャップ」を示しているのだが、合宿中に取り沙汰される幽霊と、一人っ子の千反田さんが憧れる兄弟姉妹が、相似的に配置されている面白い趣向。
  • おせっかいな姉のいるホータローにとって千反田さんの抱く憧れはバカバカしいもの、とはいえホータローが千反田さんの「イメージと現実のギャップ」に日々翻弄されている事実を鑑みれば、わりと普遍的なテーマかも。

ラスト近く

  • 現実の姉妹関係を見て思い悩む千反田さん、ホータローは「千反田の望む兄弟ってのは枯れ尾花なのかもな・・・」とぼやく。
  • しかし、前方で仲睦まじそうな善名姉妹を見た千反田さんは、目を輝かせて走り出す。
  • ここでホータローの思い描く「千反田える像」があっさり覆さえる。
  • このあたりは原作と少し違う演出。アニメ版では最後に「ホータローの見立てが外れる」点で6話との相似を出している。

イメージと現実のギャップとか(2)

  • アニメ版では、毎回の謎解きもさることながら「ホータローの思い描く千反田さん」と「現実の千反田さん」のせめぎ合いが見どころになっていると思う。
  • それに加えて今回は、ホータローの視点を離れたところで、寝起きで乱れ髪が色っぽい千反田さんが出てくるなど、純粋に視聴者向けのサービスショット的な演出もありました。シリーズ中盤の水着回も楽しみですね。
  • 前にハルヒを引き合いに出したけど、むしろ『妖狐X僕SS』の御狐神くんのほうが千反田さん的なギャップには近いか(思いつきです)。

今週の摩耶花

  • 合宿1日目は、セーラー風の襟がついたブラウス。学校の制服がセーラー服なのにこの私服チョイスは女子的にどうなのか。
  • 今回は珍しく幽霊におびえる表情。
  • ホータローに謎解きを催促するくだりでは千反田さんと顔を並べて、目を輝かせている(とはいえ、顔は怒っている)。
  • 諸般の事情により、ホータローの謎解きにむくれるショットは出てこない。

その他

  • 民宿の寝室で里志のくるくる踊り。
  • 露天風呂の脱衣所で、ホータローがジーンズを下ろすと生のお尻が・・・省エネ主義を突き詰めるとノーパン主義になるのか(一緒に脱いだだけかもしれないけど)。
  • 善名姉妹の年齢設定は原作より2歳下げられている。原作どおりに梨絵が中2だと「中学までラジオ体操に参加していた」千反田さんの特異性が際立たなくなるので配慮したのだろうか。
  • 梨絵の声は豊崎愛生さん。2人姉妹の姉という設定ゆえか『けいおん!』での唯の声質とやや似ている。しっかりしているのかいい加減なのかよく分からない性格。

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)