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映画『けいおん!』について、とりあえずのまとめ(1)

12月の公開から映画館に9回足を運びました。いろいろと見どころの多い作品だけに感じたことを書き綴っていけば取り留めのない内容になりそうなので、キャラクター別に段落を設けて書いてみます。

言わずと知れた部長殿。今までとかく大ざっぱでいい加減な面の目立つキャラクターでしたが、この映画版では「結構しっかりしてるんだなあ」と感じる場面が少なからずありました。

  • 旅行1日目、回転寿司屋でオーナーらしき人に直談判を試みる。
  • ロンドンでのフェスディバル(演奏)に参加するに当たってのとりまとめ役。
  • 帰国後、教室ライブをする前に「4人でやろうと思うんだけど」と、わざと梓を外すような口ぶりで梓の奮起を促す。
  • 「U&I」の演奏中、ステージから飛び降りた唯を静かに見守る。
  • 屋上で「天使にふれたよ」の演奏を前にして緊張している仲間を勇気づける。

この映画ではたいていの場合、何かアイデアをひらめいて発案するのは唯ですが、それを実現・行動に移す際の「音頭取り」はりっちゃんが受け持っています。また、けいおんシリーズを振り返ってみれば、彼女は他の子たちのように作詞・作曲ができるとか、演奏技術が高いとか、軽音部での活動に限って言うと決して抜きん出たスキルを持っているわけじゃない、ひとことで言えば凡人なんですね。それぞれスーパースキルを備えた軽音部メンバーの中で凡人のりっちゃんが存在感をアピールするならば、時には道化役を買って出る度胸、無根拠な勇気と決断力が必要になってくるんじゃないでしょうか。
とまあ、そんなりっちゃんの姿や背景に気付かされると、いろいろグッとくるものがありました。
あと、教室ライブを終えて教室で一息ついているところの横顔ショットも良いです。2期1話にも、少し浮かない顔つきで校歌をうたう横顔のカットがありましたが、ああいう何気ない表情を逃さない演出が好きです。

憧れのミュージシャンたちの故郷・ロンドンへの卒業旅行が叶って嬉々としていたのも束の間、ロンドン到着後の空港でスーツケースを見失う場面をはじめ、回るものを見かけると条件反射で青ざめるなど、いろいろと残念な役どころになっています。海外経験豊富な紬をしのぐ英語ヒアリング能力を持ちつつ、決して自分からは人に話しかけないところも澪らしいですね。
卒業旅行の行き先がロンドンになったのは制作スタッフの趣味が反映されてのことと思いますが、HTTの中では最もブリティッシュ・ロックへの造詣が深いであろう澪の趣味世界*1を、劇中ではあまり突っ込んで言及しないところはけいおんシリーズらしい方向性だと思います。
この映画では、劇中で言及しない代わりにエンディング映像で"Quadrofenia"や"The Kids Are Alright"といったThe Who関連のモチーフを引用するなど、思うぞんぶん音楽関連の趣味世界を披露しています。また、映画のサウンドドラックCDにおいても、ディスク表面のデザインにThe Whoの同心円ロゴ風な趣向をこらしているのが見て取れます。
ED映像については、TVシリーズ以上に澪の自意識というか願望世界を反映していると思います。普段の引っ込み思案で恐がりの彼女なら、自分から断崖絶壁に立って花を落としたり、みんなの先頭に立って全力疾走なんかしませんよね。今の自分よりずっとずっと大人でかっこいい自分に憧れているところは澪らしいと思います。

1期13話より。ひとり旅。

本作でのポイントは「HTTの中でひとりだけ、旅行に楽器を持っていくのを忘れる」ところですね。
回転寿司屋で演奏をするよう促された際、りっちゃんの前にムギちゃんが店内スタッフに何かを訴えにいく場面があります。ここでの会話は明らかになっていませんが、たぶん以下のようなやりとりだったと思います。

紬「エクスキューズミー!あの、私の弾くキーボードを用意してもらえます?」
スタッフ「え・・・?君たちってキーボード使わないバンド*2だったんじゃ・・・ごめんごめん、今すぐスタンバイさせるから待ってて!」
紬「やったー!ありがとうございます!」

当初は、最初に立ち寄ったホテルの時と同じくムギちゃんの英会話スキルが拙くてトンチンカンな意思疎通になってしまったのかと思いましたがさにあらず。りっちゃんたちの思いとは正反対ですが、彼女は「みんなと一緒に演奏できるせっかくのチャンスを逃したくない!」という明確な意思を持っていたんですよね。TV2期から特に顕著なスタンス「少しでも多くの時間をみんなと楽しむために使いたい!」がここでも発揮されたのだと思います。そういう意味では本当にぶれないキャラだなあと感心させられます。
Twitter上のやりとりで気付かされたことですが、ロンドン到着直後の空港で彼女が必死にケータイでメールを打っているのは自分用のキーボードの手配を依頼する目的のようです(4日目の朝に届いた)。ただ、あの時点では寿司屋や野外でのライブ計画はなかったのですから、単に「みんなと楽器を持って記念写真を撮る」だけのためにキーボードを取り寄せたということになります。そういうところでお嬢さまパワーを駆使するとは金持ちスゲー(byりっちゃん)。

2期2話より。ホームセンターでの買い物。

*1:アビー・ロードの横断や、セックス・ピストルズ関係で有名なヴィヴィアン・ウェストウッドの店舗カットなど「ほのめかし」程度の印象づけはされています。

*2:実際に演奏する予定だったラブ・クライシスはギター・ベース・ドラムの3ピースバンドである。