『けいおん!!』第22話を見た。

第2期に入ってから「三年生4人&二年生3人」の構図から「あずにゃんのぼっち問題」を浮き上がらせる演出は何度となく出てきているわけで、今回もその流れなんですけどね。梓が部室に駆け込むシークエンスもしっかり反復されていますし。

Aパート

前話と同じく、梓がひとりでギターを練習するカットがあって、受験勉強に疲れた唯と律が「息抜き」としてそれぞれの楽器に手を出すシークエンス(といっても音だけですが)が出てきます。第21話を見た後「なんで部活を引退したはずの唯と澪が楽器ケースを担いで登下校しているのか?」が気になっていたんですが、やっぱりみんな梓に気をつかってるんじゃないかと思います。今回は「音楽が鳴っているほうが勉強に集中できる」と言っていた澪も、その直後にどうやらセッションに加わったようですしね。とはいえ、三年生がいくら気をつかっても、4月には梓がひとりになってしまうことには変わりないわけで、ぼっち問題は最後の最後まで引っ張ることになるんでしょうね。

Bパート

受験勉強&試験に関しては、原作のほうで「4人そろって志望校に合格」というゴールをすでに提示しているようですし、そのあたりはサクッと流してOKですね(平沢家の両親は、学園祭を見に来てくれていたからか、今回は登場なし)。
原作では唯たちが二年生のときに出てきたバレンタインデーのエピソードを、ここで持ってきたのも良かったと思います。梓が卒業目前の先輩たちに渡す手作りケーキには色々な意味合いが込められますから。
そして今回のバレンタインのお菓子作りには、原作では登場しなかった純ちゃんが加わっています。ここで改めて彼女の立ち位置が面白いなあと思いました。スーパーでの材料選びで見せる純ちゃんのテキトーぶりは「やっぱりなあ」と微笑ましくもありますが、終盤で軽音部の4人にそれぞれお菓子を渡すくだりも見逃せません。
いくら澪が「憧れのベーシスト」だからといって、渡すプレゼントに露骨な大小差をつけるのは・・・これはあまりにも感じ悪いですよね。やや違和感を覚えさせるところではあります。でも律たちからすれば、純ちゃんは「まあ・・・よその部活の子だしね」くらいで納得できるポジションなんじゃないかな。ずっとそれくらいの距離感なんですよね、純ちゃんと軽音部は。
個人的に純ちゃんは気になるキャラクターだし、以前には「学園祭では澪の代わりにベース弾け!」なんて書いたこともありますけど、よくよく考えてみればそれはありえないというか、モブキャラを含めて『けいおん!!』では、主役5人と周囲の関係性に微妙な濃淡差をつけることで人物描写にリアル感を出す狙いがあるようにも思えます。
たとえば、今回は三年生の教室にやってきた梓たちを見たいちごちゃんが「あっ、軽音部」と反応するくだりがありました。ここで「梓ちゃん!」と固有名詞を出したらダメなんですよね。いちごにとっては「去年の学園祭でライブやってた子」くらいの認識、というのがちょうど良いリアルさなんだと思います。ライブでは誰もがノリノリだったけど、実はみんなが同じ親近感・距離感を持って接しているわけではないと、そこらへんが上手く描写に出ていますね。
終盤では、第20話と同じように部室の窓辺に集まる5人のカットが出てきます。ここでも卒業や別れを感じさせるやりとりがあるんですが、ぼくとしては20話のような「泣き」を入れない今回の演出のほうが自然だったし、好感を持てました。みんなが笑っている途中で梓だけがふっと真顔に戻る瞬間とか、あれだけでも充分泣けます。
ほかの注目点としては風景描写ですね。重たい鈍色の空とあかね雲、神社の手水場に落ちた椿と携帯メールの桜、こういうさりげない対比も良かったです。背景に現れる明暗の差といえば、ぼくの大好きな第5話「お留守番!」とも通じるところがありました。