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『ハーバード白熱教室』第1回を見た。

4月からの本放送を見逃していたのだが、昨晩からまとめて再放送やってるので録画しておいた。
http://www.nhk.or.jp/harvard/
番組の前半は、哲学という学問についての概要的説明。サンデル教授いわく「君たちが既に知っていることを教える」学問であるとのこと。既知の事柄に疑いを向けつつも、懐疑主義的な諦めスタンスを批判。カントによる懐疑主義への批判「懐疑主義は人間の理性の休息所である。しかし永久にとどまる場所ではない」の紹介など。
後半から道徳をめぐる問題に入っていく。
思考のサンプルとして提示した「暴走する路面電車」の話に続いて、イギリス人船乗りによる食人事件の話がメインテーマとして取り上げられた。食糧の欠乏した漂流船の中で、衰弱した乗組員を殺して食べる行為は「道徳的に」正当化できるかどうかをめぐって、学生たちの意見を聞いていく流れ。
出てきた意見をまとめると

  1. 残りの乗組員が生き残るために仲間を殺す行為は正当化できる
  2. 適切な事前手続き(被害者の同意を得る、全員合意の上でくじ引きで被害者を決める等)があれば正当化できる
  3. いかなる場合も殺人・食人行為は正当化できない

だいたい上の3つに集約されるかな。
上の意見3的な「どんな殺人も道徳的にはダメ!」というのは「ダメなものはダメ!」的な同語反復っぽいけど、どうなんだろう。まあ、これはカントのいう「定言的命令」なんでしょうか。今後の勉強課題。

カントの定義によれば、「仮言的命令」は「条件つき命令」とも呼ばれ、ある目的に対する手段としての行為を命令します。たとえば、「もし合格したければ勉強すべきだ」という命令のように、「合格」という目的に対する「勉強」は、手段にすぎません。このような命令を仮言的命令というわけです。
これに対して、「定言的命令」は「無上命令」とも呼ばれ、人間に無条件で適用され、文字通り、これよりも上のカテゴリーが存在しない行為を命令するというものです。
高橋昌一郎著「哲学ディベート」p.43

上に挙げた意見2は「仮言的命令」、意見3は「定言的命令」に近いかな。
意見1が、カントと並んで紹介されたベンサムの「功利主義」的な考えだと思いますが、この講義の前半にちょろっと出てきた臓器移植の話もそうだし、「原爆投下で多くの人命が救われた」という物言いだって功利主義的ですね(ただ、戦争における功利主義には「自国の犠牲は気にするけど、敵国の犠牲がどれだけ多かろうと知ったことっちゃない」という考えが多分に潜んでいると思いますが)。
ともあれ、物事を「道徳」という視点から評価していくのは、簡単なようで難しいチャレンジだと思いました。ややともすれば「単にお前の持論を『道徳』で武装してるだけだろう?」と反撃されかねませんから。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

第1回放送分の話は、上記書籍の第1章〜第2章に出てきます。この本でも、道徳や功利主義の話題が出てきます。併読もおすすめ。