年始の再放送(ETV特集 シリーズ「日本と朝鮮半島2000年」第8回 豊臣秀吉の朝鮮侵略)

秀吉の朝鮮出兵は、日本と朝鮮半島の歴史を語る上で避けて通れない話題であることは間違いないのだが、前に書いたように「日本は加害者、朝鮮は被害者」という紋切り型の捉え方で終わってしまってはつまらないなあ、という思いもあった。番組の中では、リポーター役の大桃美代子が(どういう意図だったのか知らないが)「倭軍」という言い回しを何度か使っていた*1のを聞いて「そりゃあねえだろう」とツッコミを入れたくなったりもした。もっとも、ぼくとしてはそんな言葉遣いの揚げ足をとって反日だの何だのと言うつもりはないし、そもそも当時の朝鮮が日本に攻め入られるイワレは全くないわけで、そのあたりはしっかり認識しておくべきだけれど、ヘンに相手に擦り寄るポーズを取るのはどうよ・・・という気分も覚えた。
以下は、ぼくの雑感を交えた話。
放送の中では、

  • 朝鮮では、戦国時代を経た日本の情報がほとんど入ってこなかった。また、李氏朝鮮の建国からほとんど戦争を経験しなかったので外敵の攻撃から国を守る準備が整っていなかった。
  • 日本では、秀吉は朝鮮国王を戦国大名の1人くらいにしか考えていなかった。

という話がでてきた。秀吉による朝鮮出兵には、日本・朝鮮の双方とも「相手を知らなさすぎた」悲劇もあるのだろう。
水軍を率いて日本軍を撃退した李舜臣が韓国で英雄視されているのは前から聞いている話なので「ふーん」程度にスルーしようと思ったが、李舜臣が主人公の韓国小説「孤将」が蓮池薫さんの翻訳で出ているとは知らなかった。

孤将 (新潮文庫)

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機会があったら読んでみよう。
不滅の李舜臣 第1章 前編 DVD-BOX

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ドラマのほうはDVDになっているのか。
日朝の戦いにおいては明(中国)の存在も見逃せない。朝鮮側からすれば、日本に攻め入られたことだけでなく、明が自国の「頭越しに」日本と講和交渉に入ったことのショックも大きかったんじゃないかな。先に取り上げられた元寇、時代が下っての日清戦争朝鮮戦争と、けっこう中国側が朝鮮半島を戦場として「使ってきた」歴史もあるわけで、日本のみならず中国への恨み辛みとか、中国だけじゃないけど近代に至るまで周辺国からいたぶられてきた小国ゆえの悲しさ、というのが韓国人のメンタリティとして受け継がれているんだろうな。
あと、韓国の研究者が「満州(マンジュ)」という言葉を何度か使っていたけれど、字幕では「中国東北部」と直されていた。やっぱり日本の放送では「旧満州」はOKでも「満州」は禁句なのね。

*1:韓国の研究者たちは「イルボン(日本)」と言っていたように聞こえた。