アンコール上映の"THIS IS IT"

昨年でいったん上映終了となったあと、最近MOVIXでアンコール上映しているのを見てきた。
ぼくがマイケル・ジャクソンをリアルタイムで聞いたのは中学生の時、同級生から"BAD"のCDを借りてはじめてマイケルの曲に接したわけだが、思い返せばあれがいわゆる「洋楽」との最初の出会いだった。なにこれ!むちゃくちゃカッコエエやん!もう、それくらいしか形容する言葉が(今でも)見つからないのだけれど、やっぱり良いものは良いですよね。
"Beat it" "Billie Jean" "Thriller"とかは後で知ってそれはそれでカッコイイのだが、この映画を見ていてもやっぱり"BAD"の収録曲、"The way you make me feel" "Smooth criminal" "I just can't stop loving you"なんかがバンバン出てくると個人的には嬉しかった。気がつくと足でリズムをとったりサビの部分を口ずさんだり。最後のほうになって聞こえてきた"Man in the mirror"は涙なしは聞けなかったです。
とはいえ、マイケル・ジャクソンにハマっていた期間は80年代後半から90年代初頭の非常に短い期間だけだったな。"Dangerous"以降のアルバムはほとんどベスト盤に近い内容だし、マスメディアから流れてくるのはたいていがスキャンダラスな話ばかりだし、ぼくの中でも「もうマイケル・ジャクソンは過去の人だな、死んだも同然だな」と冷たく切って捨てしまった気がする。昨年の夏に彼が亡くなったニュースが飛び込んできても「ああ・・・」くらいしか言葉が出なかった。
昨年末、BS-hiで放送していたライブ映像とか、この映画"THIS IS IT"を見て、やっとのことで「むちゃくちゃカッコエエやん!」という若かりし日の印象がググッと蘇ってきた、というのは遅きに失したとしか言いようがない訳で、なんとも情けない話ではある。しかし、マイケル・ジャクソンとはおそらく親と子ほどの年齢差があるだろうダンサーやコーラス隊の面々が感慨深げに語るシーンや、どう見ても50代のおっさんには思えないマイケルのヴォーカルとダンスパフォーマンス、リハーサルでも絶対に手を抜かない完璧主義者ぶりなど、なかなか興味をそそる映像だった。
このドキュメンタリーは非常に価値のある映像だし、PV映像をふんだんに織り交ぜながらエンターテイメントとして観客をできるかぎり楽しませようとする制作サイドの意気込みも強く伝わってくる。ただ、この映画の宿命であり、言うだけ詮ない話かも知れないが「物足りなさ」もどこかで感じてしまう。ライブパフォーマンスと観客の熱気が相まった臨場感、多幸感、そういったものは、やはり「本当の」ライブ映像にはどうしたって及ばず、ぼくとしては100%の満足度には至らないからだ。そういう意味では2008年の末に見たローリング・ストーンズの"Shine a light"は圧倒的な鑑賞体験だったのだが、そんなことを振り返ってみるにつけて、かえすがえすも残念、としか言いようがない。