大谷大学で「韓国仏教美術の名品」展
きのう、京都駅構内の円柱広告(正確な名称を知らないんだけど、まるい柱にディスプレイされているポスターのことね)で見つけた展覧会。
大阪市立美術館「道教の美術」と同じく、こちらでも無料の講演会を同時開催していたので聞きに行った。今日は「高麗仏画の境界」というお題で、韓国・ソウルの東国大学校教授・鄭于澤氏のお話でした。
日本では平安〜鎌倉時代にあたる高麗時代(9〜14世紀)の仏画は、現存しているものが160点くらい、その多くが国外(日本やアメリカ)に渡っており、韓国国内でもわりとマイナーな研究分野だったらしい。以下、講演時にとったメモより。
- 高麗仏画の特色
- 描かれている仏の多くは「阿弥陀如来・観音菩薩・地蔵菩薩」である。
- 色づかいがシンプル。主に使用する顔料は朱・群青・緑青の三種類。
- 明度・彩度が落ちることを防ぐため、顔料を混ぜることなく、重ねて塗る手法をとる(群青→赤→白色など)。
- 色落ちしないのは「裏彩色」を施したため。
- 金泥で輪郭を描くことが多い。また、唐草・蓮華円文といった金泥による独特の文様が特徴的。
- 画面に「空間」を残さず、びっしりと文様や仏像で埋め尽くすことが多い(プロジェクターで「萬五千佛」の図を紹介。拡大してみるとたしかに2〜3センチ大の小さな仏像がひしめいている。個人的にはちょっと苦手だなあ)。
- 上記のことから、高麗仏画は「工芸性が強い」と言える。
- 同時代の中国仏画(宋代〜明代)との比較
- 同時代の日本仏画との比較
韓国においては、日本の仏画が「高麗仏画」だと誤って認識されたケースもあり、鄭さんもなかなか苦労したのだとか。美術の専門家らしく「本物と偽物を見分けるには、仏画の描かれた国や時代による描き方の違いを見極めることが大切だ」と力説しておられた。講演会では多数の仏画がプロジェクターを使って紹介されたので、素人のぼくにとっては非常に分かりやすかった。
講演会のあと、大学構内の博物館で実際の展示を見に行った。展覧会では高麗時代に限らず、三国時代〜李氏朝鮮時代にわたる朝鮮半島の仏教芸術作品を見ることができた。館内ではグレーの僧衣に身を包んだ韓国人僧侶らしき人たちもちらほら見かけた。
講演会で紹介された「阿弥陀八大菩薩像」などは、何も予備知識なしで見たらふーん、くらいの印象で通り過ぎたかもしれない。良い予習になりました。その一方、巻物の経典なんかはやっぱり馴染みが薄いのでふーん・・・と半ばスルー気味。李氏朝鮮時代に入ってハングル混じりの書物が出てきたのが気になった程度かな。
あと、仏像はどれも素朴な雰囲気、決して技巧的に優れているわけでないけれど素朴な温かさがある感じだった。鮮やかな原色で彩られた文殊菩薩像(子供のような菩薩さんが獅子に乗っている)や羅漢坐像などは、非常にかわいらしいものだった。