大阪市立美術館で「道教の美術」展
地下鉄・天王寺駅から徒歩5分ほどのところにある大阪市立美術館。天王寺公園の入口付近では子供連れの家族が目立っていたが、こちらは動物園目当てなのだろうか、美術館の客はかなり年齢層が高かった。
美術館に入って、まずは13:30から始まる講演会の整理券をゲット。今日は関西大学教授・二階堂善弘氏による「中国の神々と仙人」というお題の講演である。専門は中国の民間信仰や道教だが、大学で教職につくまではサラリーマンやシステムエンジニアをしていたという異色の先生。専門分野以外では60〜70年代ロックやパソコンいじりが好きらしい。美術館長の紹介では「おたく」という形容も出てきたが、声のトーンにやや岡田斗司夫を思わせるところがあり、ハイテンションな話し方が印象的だった。
それはともかく、中国における道教・民間信仰の位置づけや、神様や仙人の紹介などが、講演のメインとなっており、展示品を見て回る前にざっくりと知識を頭に入れておく良い機会となった。以下は講演中にとったメモから。
★道教と民間信仰の違い
- 道教
- 宗教家は道士。宗教施設は道観。
- 崇拝対象は、三清(元始太尊・太上老君・霊宝天尊)、玉皇大帝、紫微大帝、玄天大帝など。
- 中国全土にわたって普遍性があり、伝統が古い。
- 民間信仰
- 宗教家は法師・師公、端公、タンキーなど(地域によって異なる)。宗教施設は廟。
- 崇拝対象は、媽祖、関帝、二郎神、哪吒太子など(ただ、関帝は道教の中に取り込まれている)。
- 地域によって信仰形態が異なり、シャーマン的要素が強い。
★道教の主な神々
★道教の主な仙人
- 八仙(詳しくは八仙 - Wikipediaを参照。日本でいえば七福神的な位置づけか。ちなみに「八」は中国で非常にめでたい数字とされている)
★民間信仰の神々
講演に出てきた神様の名前は『西遊記』や『封神演義』を読んで記憶に残っているものが多かった。もっとも作品に登場する神様の数があまりにも多いのでほとんどが断片的な知識にすぎないのだが。
さて、展示のほうは館内に設けられた三会場にわたっておりなかなかのボリュームだった。展示のひとつひとつをしっかり見て回るには2時間以上要すると思われる。日本と関連した展示品も多い。日本には道教がストレートな形で入ってこなかったため、道教と聞いてもピンとこない人は多いだろうが、神道や仏教との関連で見てみると面白いと思う。江戸時代に描かれた涅槃図に道教の神様が出てきたり、老子が牛にまたがった「老君出関図」が岡倉天心などの画家にモチーフとして取り上げられていたり、意外なリンクも発見できた。
媽祖像をはじめ、江戸時代に中国と貿易交流のあった長崎には道教関連の美術品が多いようだ。京都で道教とリンクしそうな場所は神社関係ですかね。北野天満宮の南西にある大将軍八神社の「大将軍」は方位を司る神とのこと、方位神とか陰陽五行関係で探りを入れていくと面白そうだ。
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