『恋恋風塵』

候孝賢(ホウ・シャオシェン)の1987年作。DVDで鑑賞。
互いに淡い恋心を抱いた少年少女が、中学卒業、台北での就職、友人たちとの交流、兵役などを経ていく様を描くドラマ。80年代の候孝賢作品を見たのは初めてだが、彼の映画ならではの長回しが特徴的。当然ながらドラマチックな起伏などあるはずもなく、ひたすらゆったりとした南国台湾の風情が味わえる。
時代設定は60年代から70年代にかけてらしい。劇中によく出てくるひなびた感じの駅舎は、かつての日本もそうだったのだろうなと思わせる情景だった。南国という意味では沖縄をまず思い浮かべるのだが、沖縄には電車が走っていないからちょっと違うかな。九州南部の鹿児島や宮崎あたりではこういう場所があったのではと思ったりする。自動改札機ができる前、切符切りの駅員がいた時代のお話。鉄道好きな人が見ても楽しめるんじゃないかな。
少年少女の故郷はかなり山間の田舎村である。山間のトンネルをくぐり抜けるシーンを見て台湾南部のほうだろうかと思っていたら、北部だった。最寄り駅は平渓線の十分(シーフェン)。近くにある九份(ジォウフェン)は『悲情城市』の撮影地として有名だが、本作のロケ地でもあるらしい。
『恋恋風塵』台灣鐡路十分車站
少年の名前が阿遠(アワン)で少女が阿雲(アフン)。彼ら以外にも人名に「阿」のつく人がやたらと出てくるなあと思っていたのだが、阿というのは日本でいう「〜ちゃん」のような意味だそうな。
http://sinkodomo.seesaa.net/article/45017537.html
劇中では「武(タケ)」と呼ばれるおじさんも出てきたが、これは日本統治時代の名残かな。
それから、ヒロインの辛樹芬(シン・シューフェン)は『悲情城市』にも出演している人です。