微妙に残暑ざんしょ

夕方から猛烈に眠くなった。パソコンのモニターを見ていたら1分と経たないうちに意識を失ってしまう。気がついたら視線ががくんと下に落ちている。つまり寝入ってしまったわけだ。そんなことばかりが続く。しかも単に眠いだけでなく、耳元で誰かがささやいているような幻覚を覚えている。内容はすぐに忘れてしまったのだが、まったく仕事とは無関係の話だった。ぼくもついに幻聴を聞くようになったか。
先月、妹が長男を出産したとか。1年以上会っていないこともあり、随分遠くの話のように聞こえた。ぼく自身といえば誰に言われるでもなくモテない人生まっしぐらだし、20代の頃なら彼女欲しいな、あんなことこんなことやりたいな、そのうち結婚もしたいな、などという淡い幻想を持たないでもなかったが、20代後半でそんな話は自分にとってやはり夢物語に過ぎないことをなんとなく悟り、30になってそれが確固たる自覚となり、現在に至るというわけだ。
こう言っちゃあ実も蓋もないが、セックスがらみの話が下ネタとして純粋に楽しめるのは、やはりモテない男(女も?)の特権なのかも知れないと思ったりする。子供が欲しいから排卵日のタイミングなんかを考えて床に入るという話は映画『ぐるりのこと。』に出てきたし、ぼくの友達からもちょこっと聞いたが、なんかそういう生臭い生活感や義務感にまみれたセックスというのを、つまり将来の出産や子育てを視野に入れた上でのセックスというのを、実感として分かる人間と分からない人間とは、ほとんど思考回路を異にしているとしか思えない。
ぼくはアニメ関係にほとんど詳しくないけど、生身の女性は何か生臭そうだから二次元の女の子を相手にしているほうが楽しい、という感覚は何となく分かる。しかし、それとは別に、たいして美人でもなく可愛いわけでもないリアル女性が、ふとした拍子に見せる仕草とか声のトーンが可愛く思える瞬間というのも分かる。ただ、そういう可愛さって思いっきり主観の話だから、ぜんぜん知らない第三者には伝わりにくいだろうな。実写であれアニメーションであれ、創作物に出てくる被写体には第三者が短いスパンで共鳴できる「わかりやすい」可愛さが求められているわけで、それとは逆に、たとえば還暦過ぎたおっさんが台所に立つ妻をふと可愛いと思ったなんて感覚は(本人にとって切実なものであればあるほど)他人には不可解にちがいない。